2007年3月13日火曜日

球体間接人形

ハンス・ベルメール写真集
ハンス・ベルメール写真集
ハンス・ベルメール,アラン・サヤグ,佐藤 悦子


2〜3年前に、球体間接人形について日記で書いたように覚えていますが、本棚の整理をしていたので、奥の方から出てきたこの写真集を久々に見ていて、相変わらずそのベルメールの圧倒的な緻密で繊細、でも、ちょっと理解のかなたに行ってしまっている世界観にはまってしまっています。
最初に出会ったベルメールというと、「イマージュの解剖学」なんですが、最初は気味が悪かったなぁ。
実際、球体間接人形というのは、ベルメールに限らず、他の人形作家さんの作品でも、好ましく思う人というのは少数派なのではないかと思うのですが(日本人に限って言えばという意味ではありますが)、結局それは嗜好の問題で、フィギュアが好きとか、リカちゃんやバービーが好きとか、日本人形が好きなどというのと、そう大差はないと思うのです。
ワンフェスのガレージなどとしてよく売られている、オタク好みの巨乳エロフィギュアと、ベルメールの球体間接人形は、そりゃ見た目には全然違うものかもしれませんけど、究極としては、それを所有したいという所有欲を満たすものであるという事は一緒なんですよね。
コレクターというのはそういうものだと思います。
まぁ、価格や、周囲に思われる芸術性の差というものはあるでしょうけど、そういう事はあまり関係ないのかもしれません。
なんにせよ、ベルメールの人形はシュールレアリスムやエロティシズムと密接に関連付けられて語られる事が多い訳ですし、アニメ漫画文化に浸り切っている日本にいれば感じないでしょうけど、海外から見れば日本のオタク文化に含まれるフィギュアも充分その要素を内包しているものでしょうしね。
ま、それに、私は自分がオタクだと自覚もありますし、お金が湯水の如く使えるなら、どんな伝手を頼ってでもベルメールの人形を本当に手に入れてしまいたいと思うのかもしれませんし、その辺はワンフェスで6桁以上のお金を当然のように使う人々と何の差もありません。
もっとも、お金がどれほどあっても無理な事っていうのはありますでしょうから、実際には手に入れる事が出来るとは思いませんけど。
それに、ベルメールっていうのは、人形だけじゃなくイラストも合わせて見てこそなのかなぁと思う事もありますし……、実際に一般家庭にあっていいものでもないのでしょうね。
ただ……、比較として引用しましたけど、私は巨乳系のエロフィギュアへの興味は、性別による性指向云々もあり、さほど執着はありませんが、ワンフェスは好きだし、フィギュアそのものは嫌いじゃないです。
日本人形だって好きだし、ビスクドールも好きだし、結局人形というもの自体が好きなのかなぁと思う事もあります。
例えば、今遺体切断の出てくるミステリーを書いている訳ですけど、結局その発露となるものは、人間の肉体の人形化という面が私自身にはあるように思うんですよね。
能が好きなのも、その所作の制限性であったり、舞台上の制約であったりの中に、人形というものを見ているのかも知れないと思う事があります。
浄瑠璃が好きなのも、かなりストレートにそういう部分が出ているのかもしれません。
もっとも、人形と言ってしまうと語弊はあるんですけど、なんというか、「人の形をした入れ物という感覚」が好きなんだと思います。
自分の趣味趣向を考えると、そこに集約される気がします。
私の書くものに、ミステリーが多いのは、結局、人の形をした入れ物の描写に都合がいいからというのは、否めませんね。
現実の人間に当て嵌めて考える事は出来ませんが、謎解きの一環としての描写としては、創作意欲をかき立てるのは事実であったりもしますしね。

結局のところ、私にとって「肉」の感覚を削ぎ落としていった入れ物という「物体」として、人形というのは興味を引いて止みません。
少し、ミステリーを書いてて行き詰まっていたのですが、その辺りを写真集を見て改めて自覚したので、ちょっと気が楽になりました。

0 件のコメント:

コメントを投稿